深刻な医療体制の課題:昨年臓器移植見送り509件、厚労省調査で判明

深刻な医療体制の課題:昨年臓器移植見送り509件、厚労省調査で判明

厚生労働省が初めて行った調査で、2023年における脳死者からの臓器移植に関する深刻な問題が明らかになりました。具体的には、人員不足や病床の不足を理由に、移植施設が臓器の受け入れを断念せざるを得ないケースが多発し、その結果、移植を必要とする患者が受けられなかった事例がなんと509人に上ったことが報告されました。

これまでも、東京大学、京都大学、東北大学といった主要な大学病院が、2023年には少なくとも60件以上の臓器受け入れを断念していたことが読売新聞によって報じられていました。この問題を受け、厚生労働省は実態調査を行うことを決定し、その結果が今回のデータに反映されています。

日本臓器移植ネットワーク(JOT)は、脳死判定を受けた患者の臓器を、待機リストに基づいて適合する患者に提供する役割を果たしています。しかし、このプロセスにおいて、複数の医療施設が臓器受け入れを辞退することがあり、その理由の多くが院内のリソース不足です。調査では特に肺、膵臓、心臓の移植希望者が多いことがわかりました。

この調査では、131人の脳死判定者から提供された831の臓器のうち、192の臓器が何らかの理由で移植に至らなかった経緯を追跡。結果として、3706人もの患者が移植の機会を逃したことになり、そのうち509人は施設の態勢が理由でした。

さらに、移植が見送られた理由には、医療施設の態勢不備以外にも、臓器自体の適合性や患者の他の医療条件なども含まれています。しかし、調査からは、たとえ上位のあっせん順位であったとしても、施設のキャパシティ不足により移植が見送られるケースが予想以上に多いことが示唆されています。

この問題は、約16,000人もの患者が新たな臓器を待つ現状の中で、移植医療のシステムやリソース配分の改善が急務であることを浮き彫りにしています。