香港の街を歩いて、ふと頭上を見上げれば、混雑した通りに向けられた黒い監視カメラのレンズに気づくかもしれない。このような光景は、これから数年でさらに一般的になるだろうと言われている。なぜなら、香港警察は監視能力を強化するために、何千台ものカメラを設置する計画を進めているからだ。
実際、香港はこれまで世界でも特に安全な都市の一つとされてきた。それでも警察は、犯罪に対抗するために、新たな監視カメラが必要だとしている。さらに、これらのカメラには、顔認識や人工知能(AI)を利用した高度な技術が導入される可能性もあるとのこと。
しかし、一部の専門家たちはこの動きを警戒している。彼らは、香港が中国本土に一歩近づくのではないかと懸念しているのである。中国本土では、広範な監視システムがすでに社会に浸透しており、監視カメラが市民に対して圧力を与える存在となっている。このため、香港でも同じような抑圧的な効果が出るのではないかと指摘しているのだ。
現在、香港警察は今年中に新たに2,000台の監視カメラを設置することを目標に掲げている。そして、それをさらに超える台数を、毎年追加していく可能性もあると言います。
香港警察と香港保安局長のクリス・タン氏は、監視カメラは世界中で使われていると強調している。たとえば、シンガポールには9万台以上、イギリスには700万台以上のカメラが設置されているとのことである。
イギリスなどの一部地域では、すでに顔認識技術が導入され始めているものの、専門家たちはその初期段階の実験結果から、慎重な規制やプライバシー保護が必要だと訴えている。香港警察もまた、法律に従い、内部の厳しい指針に従うと表明していますが、その具体的な内容についてはまだ詳しく説明されていない。
また、他の国々と異なる点として、香港の政治環境にも注意が必要だと指摘されている。権威主義的な中国本土との結びつきが強まる中、香港では政治的な異議に対する取り締まりが続いているのだ。
米国のシンクタンク「全米アジア研究所」の研究員であるサマンサ・ホフマン氏は、この技術の使い方に大きな違いがあると指摘。たしかに、アメリカやイギリスなどの国々でもこうした技術の導入に関する議論はありますが、香港のような地域はその根本が異なっており、政党国家が権力を維持するためにどのように法律を利用するかという点で大きな違いがあると言う。
現在、香港には政府機関が使用する監視カメラが5万4,500台以上あるとされている。これは、人口1,000人あたり約7台の割合で、ニューヨーク市とほぼ同等。しかし、ロンドン(1,000人あたり13台)や中国本土の都市(平均440台)とはまだ大きな差がある。
特に中国本土では、顔認識技術が日常生活の一部となっている。新しい電話番号を登録するときや、地下鉄駅を利用する際にも顔認識が求められることがあり、監視は避けられない。
さらに、この技術はより厳しい方法でも利用されている。たとえば、中国政府は新疆ウイグル自治区でウイグル族を監視するためにカメラを活用しており、2022年後半には、反政府デモに参加した市民を監視し、追跡するために高度な技術が使われたとも報じられていた。
ホフマン氏によると、中国の監視システムは、特定のリストに載った人物を追跡し、市全域でその動きを監視するというものである。こうしたシステムが香港にも導入されれば、時間の経過とともに、香港の監視体制は中国本土のものに非常に近づくのではないかと予想されているのだ。
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