最低賃金1500円は高すぎる? 与野党の公約に中小企業が悲鳴 年89円増加で人件費負担が直撃

最低賃金1500円は高すぎる? 与野党の公約に中小企業が悲鳴 年89円増加で人件費負担が直撃

 衆議院が10月9日午後に解散され、与野党が訴える経済政策の焦点の一つが「最低賃金の引き上げ」となっている。多くの政党が「時給1500円」を目標に掲げており、特に自民党や公明党は、2020年代のうちにこの目標を達成することを公約にしている。しかし、この目標を実現するには年平均で約89円という大幅な引き上げが必要で、企業にとって特に中小企業にとっては大きな負担となる可能性が指摘されている。

 現在、全国の最低賃金の平均は時給1055円。関西地域では、大阪府が1114円、京都府が1058円と全国平均を少し上回っていますが、それでも1500円に到達するには、過去最高だった令和6年度の引き上げ幅51円を大きく超えるペースでの増額が必要となる。

 最低賃金の急激な引き上げに対する懸念は特に中小企業で強く、関西経済の多くは中小企業が支えている。大阪府内では、2020年時点で中小の製造業の事業所数が全国で最も多い1万8604事業所に上り、そこで働く人々の割合も非常に高い。こうした企業にとって人件費の急激な増加は経営に大きな打撃を与え、最悪の場合、倒産が相次ぐ可能性がある。もし中小企業が経営難に陥り倒産するような事態になれば、多くの人が失業し、生活に深刻な影響を与えることが懸念されている。

 それでも、最低賃金の引き上げ自体が無意味とは言い難い。物価上昇率が2%台と見込まれる中、それを上回る賃金の増加は、働く人々の生活を守るために必要だという意見が広く存在している。しかし、最低賃金の引き上げを実現するためには、企業が人件費の増加を価格に転嫁できるような環境づくりが必要となる。

 デジタル化や省力化などによって収益力を強化することも、中小企業が持続的に成長するための鍵となる。奈良県生駒市でメーカーを営む36歳の後継者は、「高付加価値の製品を作り、利益を出して最低賃金の引き上げに対応できるようにしたい」と語っている。このように、価格競争ではなく高品質な製品で勝負する姿勢が、今後の中小企業に求められているのだ。

 第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストも、政府の支援が不可欠だと指摘している。例えば、経営改革に向けた設備投資への助成金や、中小企業が単独で賃金を引き上げられない場合に、M&A(合併・買収)に対する税優遇措置を引き続き提供することが重要だと述べた。また、こうした政府の支援策を中小企業に周知することも課題の一つとなる。

 総じて、最低賃金の引き上げは労働者の生活向上を目指す一方で、中小企業には大きな負担がかかる可能性があるため、その実現には細心の注意を払いながら、経済全体への影響を見極める必要があるだろう。


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