2014年9月、長野県と岐阜県の境に位置する御嶽山(標高3067メートル)で噴火が発生し、63人の死者と行方不明者を出す大規模な災害が起こりました。この噴火災害を巡って、犠牲者の遺族は国と長野県に対し、総額3億7600万円の賠償を求める訴訟を起こしました。これに対して東京高裁は、2022年7月の長野地裁松本支部による一審判決を支持し、遺族側の控訴を棄却しました。
この噴火は2014年9月27日午前11時52分に発生し、58人が死亡、5人が行方不明となり、戦後最悪の火山災害と言われています。この訴訟において大きな争点となったのは、火山活動の状況に応じて住民や登山者に注意を促す「噴火警戒レベル」を、当時の1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げなかった気象庁の判断が適切だったかどうかという点でした。
一審の長野地裁松本支部は、噴火警戒レベルを1のままにしておいた気象庁の判断を「漫然」としたものであり、違法であると認定しました。しかし、警戒レベルを仮に引き上げたとしても、自治体が行う火口周辺の立ち入り規制が噴火に間に合わなかった可能性が高いとして、気象庁の判断と災害による損害との因果関係を否定し、請求を棄却しました。これに対して遺族側は不服を申し立て、控訴しました。
控訴審では、遺族側がさらに主張を強め、観測データをより慎重に検討すれば、噴火警戒レベルを2に引き上げることができ、登山者たちは火口周辺1キロ以内に近づかず、被災を避けられたはずだと訴えました。そのため、気象庁の判断と災害との間には因果関係があると主張しました。
一方、国側は、当時のデータを再検討したとしても、警戒レベルの引き上げは必要なかったと反論しました。また、仮に警戒レベルを2に引き上げたとしても、規制範囲内で登山可能なエリアが残されていたため、登山者が完全に被災を回避することはできなかっただろうと主張しました。
最終的に、東京高裁は一審判決を支持し、気象庁の判断に法的な責任を問うことはできないとし、遺族側の請求を退けました。
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