ASEAN結束に危機感―中国対応で各国に温度差、地域の影響力が分岐点に

ASEAN結束に危機感―中国対応で各国に温度差、地域の影響力が分岐点に

 東南アジア諸国連合(ASEAN)と、日米中などの国々が加わった一連の首脳会議が終了した。ASEANは、加盟国間での「一体性」を重視し、団結を強化することを理念として掲げている。しかし、現実には中国の影響力が地域で急速に強まっており、その対応に対する各国の立場は異なっており、結束に課題が生じている。

 シンガポールにあるシンクタンク「ISEASユソフ・イサーク研究所」が今年4月に発表した調査結果によると、ASEAN加盟10カ国の有識者の間では、中国が最も影響力を持つ国として認識されていることが明らかになった。特に経済分野では59%、政治分野では43%が中国を影響力の大きな国と回答しており、いずれも最多となっている。

 例えば、ラオスでは中国の支援を受けて高速鉄道が建設されるなど、中国への依存が強まっている。カンボジアも中国からの投資や援助によって経済成長を遂げ、軍事協力も進めている。また、マレーシアは中国やロシアが参加する新興国グループ「BRICS」への加盟を申請しており、中国との関係をさらに強化している。

 一方で、他の国々は異なる道を模索しています。インドネシアは欧米中心の経済協力開発機構(OECD)への参加を目指しており、タイはBRICSとOECDの両方に加盟を申し出ています。このように、ASEAN加盟国間では中国との関係に対するスタンスが分かれており、対応が一様ではありません。

 特に、中国との対立が際立っているのはフィリピンです。フィリピンは南シナ海の領有権を巡って中国と対立しており、米国や日本との関係を強化することで中国に対抗しようとしています。ベトナムも領有権問題を抱えていますが、中国との友好関係を維持しながらも、同時に米国との関係強化を進めています。

 このように、加盟国の間で中国に対する対応が異なることは、ASEANの一体性に影響を与えています。タイの国際政治の専門家であるパニタン氏は「加盟国間で意見の相違が増えるほど、ASEANの有効性は低下する」と指摘。ASEAN首脳会議の議長国を務めたラオスのソンサイ首相も、11日の会見で「ASEANが団結を強化することがますます重要だ」と強調した。

 今後のASEANにとって、中国との関係をどう位置付け、各国間の意見の相違をどう調整していくかが大きな課題となる。


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