パレスチナのガザ地区で、イスラエル軍が殺傷能力を高めるために特別な砲弾を使っている可能性が指摘されています。これらの砲弾には無数の細かい金属片が詰められており、住宅が密集する地域でも使用されている疑いが強まっています。イスラエル軍は「民間人への被害を最小限に抑える努力をしている」と主張していますが、専門家たちはその行動に疑問を投げかけています。
4月、ガザ南部のヨーロピアン病院でボランティアとして働いていたアメリカ人の外科医、フェローズ・シドワさん(42)は、治療中に奇妙な症例に気づきました。患者たちの皮膚には、わずか1~2ミリほどの小さな穴しかないのに、体内では筋肉や内臓がひどく損傷していたのです。
シドワさんは、「通常の銃弾ではこんなに小さな傷口にはならないし、普通の破片でも体内にこれほど大きな損傷を与えることはない」と語り、この現象を「異常だ」と感じたそうです。毎日のようにこうしたけがを負った患者が運び込まれ、X線検査などで体内から直径1ミリほどの粒状の金属片が見つかりました。これらの金属片は何かの破片ではなく、意図的にその形に作られたものだったとシドワさんは説明しています。
同じような症状を持つ患者が続々と運び込まれ、特に子どもたちは手足の血管や神経が大きく損傷しているケースが多く、切断手術を余儀なくされることが少なくありませんでした。ガザ中部のアルアクサ殉教者病院でも、広報官カリル・アルダクラン氏(56)は、金属片による被害で多くの人が手足を失っていると証言しています。昨年10月以降、ガザ地区で手足を切断した市民の数は1万2000人以上に達しており、その中には4000人の子どもが含まれています。
英紙ガーディアンの報道によると、これらのけがを引き起こしているのは、硬度が高いタングステン製の金属片やベアリングが詰められた砲弾だとされています。この砲弾は、爆発とともに金属片を広範囲に飛び散らせ、殺傷能力を非常に高める特性があります。こうした兵器は、建物内にいる敵を殺害する目的で使用されることが多いそうです。
国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」による2009年の報告書では、イスラエル軍は2008年から2009年にかけてのガザ紛争でも同様の兵器を使用していたと指摘されています。この報告書では、これらの兵器を「多数の鋭利な金属片を放出する新しいタイプの兵器」として説明しています。テロ組織や武装勢力も、自爆テロの際に爆弾に釘やボルトを詰めることがよくありますが、イスラエル軍の使用している爆弾は、その「より洗練されたバージョン」であると報告されています。
イスラエル軍のショシャニ報道官は、毎日新聞の取材に対して「軍事目標を達成するために、さまざまな方法を検討し、できる限り偶発的な被害を最小限にするよう努めている」とコメントしています。しかし、アメリカの安全保障専門家であるステファン・セムラー氏は、金属片を使った砲弾の使用について「この兵器の目的は広範な被害をもたらす以外に考えられない。(住宅が密集する地域で)使用する意味がわからない」と疑問を呈しています。
結局、こうした金属片を使った爆弾は、イスラエル軍による「過剰な」攻撃の一例でしかないかもしれませんが、その被害は多くの市民に及び、特に子どもたちに深刻な影響を与えています。この状況は、国際社会が注目し、人道的な観点からの解決策を求める必要がある問題です。
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